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Hシーンを“振付”!?鈴木亮平&宮沢氷魚『エゴイスト』の本気が凄まじかった

2023/04/25 20:00

ゲイフィルムの金字塔になることを確信しました




2022年2月10日公開の映画『エゴイスト』はご覧になりましたか?
『エゴイスト』を“目撃”してきた記者は、この作品が間違いなく日本のゲイ映画の金字塔となることを“確信”しました。

そしてこの作品がすごいのは、何よりも俳優さんたちも含めた制作陣の「本気」。インタビューやパンフレットから、考えに考え抜かれた作品であることが分かります。

そこで今回は、記者が映画『エゴイスト』の魅力を、BLファンの目線を織り交ぜつつ語っていきます
あらすじで明らかになっていない根幹部分をちょっとだけネタバレしていますが、ストーリーの中で肝心な部分は伏せておりますので、これから観るよという方、観ようかまだ迷っているという方も是非楽しんでください。

 

◆目次◆
1.やはり凄い。役作りNo.1俳優鈴木亮平の本気
2.こんなん年下彼氏のイデアじゃん…宮沢氷魚が可愛すぎる
3.リアルなセックスシーンには「振付師」が!?
4.タイトル「エゴイスト」に隠された人生の物語

 


 

ガリガリ体型になったり、100キロ近くの巨漢になったりと、その役作りへの本気度と実績に定評のある鈴木亮平さん。やはり今作でも凄かった。

「ゲイ男性の役を演じてどうでしたか?」とインタビューで問われ、「それって僕が同性愛者ではないという前提の質問ですよね?」と切り返した鈴木さん。ブランド物に身を包むことで己を守り、愛を知る中でエゴとの葛藤に陥っていく雑誌編集者の浩輔を真摯に演じています。

 


鈴木さんの役作りの尽力が伺えるゲイ仲間との飲み会シーンでは、ドラァグクイーンとしても活躍されているドリアン・ロロブリジーダさんも浩輔の友人役として出演。ドキュメンタリータッチの作品だったこともあり、ゲイの当事者の観客から「自然過ぎて映画ということを忘れるほど」「ゲイの描き方が自然で自分事として見られた」という感想もあったそう。実際に記者も、あまりにも自然過ぎてこれってセリフ? アドリブ? と分からなくなっていました。

後に詳しく触れますが、当事者による監修のもとしっかりと「浩輔」のキャラクターを作り上げた鈴木さんの、観察眼と再現力にあっぱれです。


 

 



そんな鈴木亮平さん演じる浩輔の前に現れた、パーソナルトレーナーの龍太。演じるのは映画『his』で藤原季節さんとカップル役を演じたこともある宮沢氷魚さんです。

宮沢さんは、体を壊したシングルマザーの母を養うため高校を中退し働いている青年・龍太を好演。並よりもしんどい境遇のもとで生きてきた龍太ですが、どうやったらこんなピュアな子に育つの? というくらいピュアで本当に可愛いんです。 え、目が綺麗すぎない? なにこれ? 湖? 澄み切った湖なの?



しかも恋愛的には龍太の方が先に仕掛けるという積極的な側面も持っています。年下彼氏として完璧すぎる。この魅力的な龍太を拝めたのは、ひとえに宮沢さんの演技力あってこそです! 予告にもあった龍太からのキスシーンも尊すぎて泣きました。なんでこんなに可愛くなれるんだろう……。

物語が進むと彼が実はウリ専もして生活費を稼いでいることが分かるのですが、一生懸命笑顔でお仕事に励む姿や「ゆくゆくはトレーナーの仕事だけで食べていきたい」と夢を語る姿の健気さに、浩輔じゃなくても支援したくなっちゃいます。龍太くん、無理しないで……(泣)。

 


 

序盤の初エッチのシーンに、「待て待てこんなガチって聞いてないぞ!?」と度肝を抜かれること間違いなし。濃厚で妥協のないベッドシーンが繰り広げられます。
なぜこんなリアルなベッドシーンを撮ることができたのか? その秘密がエンドロールに隠されていました。というのも、この映画の特徴の一つが、とある二つの役職が日本で初めてクレジットされた作品であるということなんです。

その役職の一つがミヤタ廉さんが務めた「LGBTQ+インクルーシヴ・ディレクター」。鈴木さんから「自分の演技に違和感がないか」と意見を求められたヘアメイクさんが、そのまま正式にその役職になったそう。
当初の予定になかったゲイ仲間との交流シーンを入れることを提案し、その当事者のキャスト集めに協力したり、鈴木さんのセリフの口調や仕草などが浩輔らしくなるようアドバイスしたそうです。

もう一つが「インティマシー・コレオグラファー」。これはベッドシーンを「振り付け」し監修する役職で、本作でこの役職を務めたSeigoさんが、ゲイのセックスシーンの動作のリアリティ追及に携わられたとのこと。浩輔と龍太のシーンだけではなく、龍太がウリをする場面にも参加されています。

個人的にはベッドシーンで○○の方が○○だったことにかなり「リアル」を感じ、その後に○○になったところで一層そう感じました。何のことを言っているか分からねーと思いますが……是非見に行ってチェックしてください!

 

 

 

そして、本作の肝になる「愛は身勝手」というキャッチコピー。映画を見るまでは、「うんうんそうだよね、愛って身勝手よね〜」「相手のためと言いつつも実は自分可愛さなのよね〜分かる分かる」と思っていた記者。甘かったです。すみません。

本作は、恋愛関係だけではなくヤングケアラーや母子家庭・父子家庭など家族の問題も主題に含んでいます。 思春期に母を亡くした浩輔、シングルマザーで体の悪い母を養ってきた龍太。浩輔が龍太の母を自分の母であるかのように感じていく様子も見て取れます。

 


 

経済的に不自由していない浩輔と、若い頃から身一つで食い扶持を繋いできた龍太という不均衡な関係が、金や物を与え続ける浩輔と戸惑う龍太との関係に現れています。「受け取ってほしい」というエゴと、受け取ることへの気後れの駆け引きが、この作品の一つのリアル。

そして一つの決断が、のちに大きく運命の歯車を狂わせることになる因果の残酷さ。今この瞬間の選択が、どんな結果に繋がるのか、私たちには分からないのです。その決断が間違っていたのか、正しかったのか。独りよがりだったのか、献身だったのか。それを決めるのは誰なのか。そんなテーマが、作品には流れています。

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いかがでしたしょうか? まだご覧になっていない方にはあらかじめ警告させていただきますが、しんどいことは間違いないです。観賞後は放心状態になると思います。
しかし、当事者の表現やインティマシーなシーンにも監修を入れて真摯に作り込まれた作品。宣伝・広報にあたっても、性的マイノリティの権利を巡って活動される松岡宗嗣さんがチェックに携わっており、映画のパンフレットでは「BLを超えた」「性別に関係なく普遍的な愛」といったワードの問題性が指摘されています。

細部まで真摯に制作された本作。今後もこういった作品が作り続けられてほしいと希望を持たずにはいられません。そして、何より2人のラブラブシーンが本当に可愛すぎる……。

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STORY
14歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。
そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである⺟を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の⺟も交えながら満ち⾜りた時間を重ねていく。亡き⺟への想いを抱えた浩輔にとって、⺟に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――

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