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黎明期は〇〇俳優オンパレード!?国内実写BLの進化30年史

2022/11/14 18:00

日本実写BLのこれまでとこれからを語ろう



みなと商事コインランドリー』が話題をさらい、『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』こと「壁こじ」のドラマ化が発表されるなど、日本国内で実写BLが空前の盛り上がりを見せている2022年。今こそ実写BLの歴史を振り返らなくては……という使命感から、ちるちるでも2018年の『おっさんずラブ』革命などを考察したこちらの記事など、特集を組ませていただいています。

実写BLを愛する者として、今後の実写BLの未来をあれこれと考えずにはいられません。これまでどんな作品が作られてきたのか、どんな変化があるのかーー歴史を知ることで明るい未来を築いていこう! ということで、今回は日本の実写BLを、さまざまな角度からより徹底的に分析してみました。 

 

◆目次◆
1.昔は映画が主流、近年ドラマが急増
2.コミックスvs小説ーー原作はどっちが多い?
3.キュン需要の高まり、王道はオフィスラブ
4.ベテランBL脚本家が現役で活躍
5.テニミュは実写BLの母!? 出演俳優さんの分析
6.おわりに


注意事項
※この統計は、1990年代から2022年8月時点までに放送・配信・公開された53作品のデータに基づいています。
※考察内容は筆者の独断と裁量によります。
※「男性同士の恋愛がメインに描かれた作品」をカウントしており、「メインCPは男女だが脇役でゲイカップルが登場する」「恋愛関係ではないが男性同士のキスシーンがある」などの作品は含まれていません。
※続編やスピンオフがあるものも、まとめて一つのシリーズとしてカウントしています。

 
まず、日本の実写BLって映画が多いの? ドラマが多いの? という疑問にお答えしましょう。


本格的に「BL」としての実写作品が登場し始めた2000年代後半以降を見てみると、このような結果になりました。なんと、2018年まではドラマはゼロで全て映画。逆に、2018年以降ドラマの数がうなぎのぼりとなっています!

考えられる要因として、まずはシリーズ版『おっさんずラブ』(2018)の大ヒットでしょう。また、タイや中国などアジアの他国でのBL・ブロマンスの長編ドラマブーム、2022年に初のBLドラマ専門レーベル「トゥンク」が登場したことなども考えられるのではないでしょうか。

ただし、「ドラマ」の中には、TVだけでなくWeb配信限定、また60分×1クールの長編以外にも15分×5話前後などの短編も含まれています。今の流れでいくと、トゥンクをはじめ、じっくりと見られる長編ドラマが増えていくことが期待できそうです!

ドラマがヒットして映画化という流れも少なくありません。映画もドラマもそれぞれの良さがあるので、どちらも増えていってほしいですね。
 

 
皆さんは実写化にあたって、作品の再現度を重視しますか? それとも、作画や文章で表現されているキャラ、シーンが映像化するとこんな感じなんだ〜! と楽しみたい派ですか?

実写BLには、オリジナル作品も多いですが、原作がある作品も少なくありません。特に既に人気のコミックスや小説が実写化するとなると、公開前に話題になることも。ここでは、実写BLの原作について分析します。

※商業BLは、図中では「コミックス」「小説」となっています。
 
さて、グラフを見ると、半数近くが商業BLコミックス原作だということが分かります。調査対象の期間全体を通して多いのですが、特に2020年以降はほとんどが商業BLコミックスの実写化となっています。
原作なしのオリジナルも約35%と高い割合ですが、多くは『スキトモ』『禁断の恋』といった2000年代後半の映画です(ちなみにスキトモの主演は大人気俳優の斎藤工さんです)。2016年に初回放送された『おっさんずラブ』が、かなり久しぶりのオリジナル作品でした!

商業BL小説原作で代表的なのが「タクミくんシリーズ」ではないでしょうか。近年だとあの名作、凪良ゆう先生の『美しい彼』(2022)がありました。
ちなみに非BLコミックス原作は『きのう何食べた?』(2019)、チェリまほこと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020)など、近年増加しています。

商業BLにはコミックスも小説も骨太な名作がたくさんあります。殿堂入りレベルの人気作が実写化するとなると色々な意見が飛び交うことと思いますが、名シーンが自分の生きる世界で再現されたときの感動はひとしお。一方でオリジナルのBL作品をもっと見たい気持ちもあります……!
 


では、作品のテイストはどういったものが多いのでしょうか? 筆者の独断と偏見により、5つのカテゴリーに分けてみました。

キュン・・・とにかくキュンキュンする! 少女漫画系BL(『不幸くんはキスするしかない!』など)
シリアス・・・画面の彩度低め、涙あり別れありのシリアスBL(『窮鼠はチーズの夢を見る』など)
ダーク・・・暴力、死ネタなどダークな世界観のBL(『恋い焦れ歌え』など)
コメディ・・・特殊設定も? テンポよしラブコメBL(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』など)
ほのぼの・・・時の流れが緩やかなほのぼの日常系BL(『リスタートはただいまのあとで』など)

 

見てください、この2022年の圧倒的キュン率を。この手の作品は、やたら見つめ合った途端スローモーションになったり、サービスキスシーンが多かったり、BL的萌えのハッピーセットが特徴です。このキュンBLシーンの中心は、やはりトゥンクさんでしょう。

窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)や『ポルノグラファー』(2018)のようなシリアス作品は、コアなBLファンも思わずスタンディングオベーションしてしまう名作が多いですね! 『性の劇薬』『恋い焦れ歌え』といったダーク作品も異彩を放っています。

ちなみに、気になる2000年までの内訳はこちら。

『二十才の微熱』(1993)→シリアス
『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(1994)→ダーク
『渚のシンドバッド』(1995)→キュン
『1999年の夏休み』(1998)→ダーク
『御法度』(1999)→ダーク
『独立少年合唱団』(2000)→シリアス

圧倒的暗黒の実写BL黎明期ですね。 


次に、CPや設定のジャンルを見てみましょう。

 
※リーマンや教師などを含む、主にオフィスを舞台とした社会人同士のCPを「社会人」、大学生×おじさんなど属性の異なるCPは「年の差」、どの属性にも当てはまらない日常系を「日常」などと分類しています。

やはり目立つのは社会人、大学生、高校生といったジャンル。確かに大学生・高校生の青春ラブは人気ジャンルですし、社会人は設定のバリエーションが広がって多様な面白いストーリーが生まれそうです。

ちなみに「中学生」は2000年以前のみ。21世紀以降は高校生以上が定石に。高校生と社会人が二強となっております……!
 

 
監督と脚本家、この役職によってその映像作品の方向性が決まると言っても過言ではありません。
ここでは、3作以上のBL作品に携わる監督さん・脚本家さんをご紹介します。

■監督(脚本と兼任もあり)
草野陽花さん
・・・まさに黎明期の実写BLを支えた方。
作品例:『僕らの愛の奏で』(2007)、『禁断の恋』(2007)、『BL 〜僕の彼氏を紹介します〜』(2008)
金田敬さん・・・心理描写が繊細な、名作恋愛映画揃いです。
作品例:『愛の言霊』(2008)、『純情』(2010)、『富士見二丁目交響楽団シリーズ 寒冷前線コンダクター』(2012)
三木康一郎さん・・・シリアスからコメディまで。今後の実写BLの発展にも寄与してくださるのではないでしょうか?
作品例:『ポルノグラファー』(2018)、『絶対BLになる世界vs絶対BLになりたくない男』(2021)、『ギヴン』(2021)


■脚本家
高橋ナツコさん・・・実写BL転換期を代表する脚本家さんです。
作品例:『どうしても触れたくない』(2014)『セブンデイズMONDAY→THURSDAY』(2015)『ひだまりが聴こえる』(2017)『花は咲くか』(2018)
金杉弘子さん・・・実写BL脚本の巨匠。2022年の「ふこキス」で金杉さんのお名前を見た時、「あの『タクミくんシリーズ』の方……!?」と驚きました。作風は、少女漫画のようなキュンキュンBLといった感じでしょうか。
作品例:『タクミくんシリーズ』(2008~2011)、『スキトモ』(2007)、『僕たちの高原ホテル』(2013)、『宇田川町で待っててよ。』(2015)、『不幸くんはキスするしかない!』(2022)
 

BLを得意とする安心と信頼の監督さんや脚本家さんがいらっしゃる一方、『窮鼠はチーズの夢を見る』を世界的に有名な行定勲監督が手掛けるなど、BL以外で活躍する方の参入も見られます。ヤクザものが得意な監督さんや、時代劇が得意な脚本家さんとかの実写BLも見てみたい……どうですか

 


こちらも2005年以降を分析してみると、まず気づくのは、初期の「テニミュ俳優」率の高さ。世の中の役者さんって全員一回テニミュ経由してる? と錯覚するくらいテニミュ出身です。

テニミュとは、2.5次元ミュージカル『テニスの王子様』のこと。若手俳優の登竜門とも言うべきジャンルで、実写BLに限らず現在活躍されている俳優さんの中にもテニミュ出演歴のある方は少なくありません。

2005年〜2014年の10年間の実写BLを見てみると、メインCPの役者さんの実に2/3がテニミュにご出演経験あり。

2.5次元とBLファン層の重なりが関係するのでしょうか。ちなみに、残り1/3は仮面ライダーや舞台などのお仕事を主にされてきた方が多い模様。
また演技歴が5年以内の若手俳優さんが多いのも特徴で、ピチピチのイケメンがたくさん! 今やすっかり大人気俳優の斎藤工さんの初々しい姿も拝めます。

2015年以降は少し変化が見られ……依然としてテニミュ出身俳優さんの出演も目立ちますが、存在感を増してきたのは邦画・邦ドラマで経験を積んできたベテラン俳優さんではないでしょうか。例えば『ダブルミンツ』(2017)の淵上泰史さん&田中俊介さんや、『ポルノグラファー』(2018)の竹財輝之助さん、『おっさんずラブ』(2016)の田中圭さんなどです。

2020年以降なると、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の赤楚衛二さんなど仮面ライダー俳優の増加のほか、男性アイドルグループのメンバーが実写BLに参入してくるように。ジャニーズといえば2000年以前にも、若かりし頃のKinKi Kidsのお二人によるBLなどがありましたが、やはり今をときめく人気絶頂グループの看板メンバーがメインCPとして共演した『消えた初恋』(2021)や、ジャニーズJr.が出演している『高良くんと天城くん』(2022)は画期的でした。
また、スターダストプロモーションやLDHなど、ジャニーズ以外の事務所のアイドルグループからも輩出されています。 

今やベテランから若手まで、さまざまな経歴を持った役者さんが出演されている実写BLの世界。田中圭さんが『おっさんずラブ』のヒットをきっかけに多数のドラマ主演を果たす、『消えた初恋』の井田役を務めた目黒蓮さん(Snow Man)が朝ドラのキャストに抜擢されるなど、俳優の登竜門的な存在感が強くなってきました。今後はどんな展開がされるのか楽しみですね……!



さて、ここまで日本の実写BLをさまざまな角度から分析してきましたが、いかがでしたでしょうか? キュンBLが流行っているなら、いっそギスギスのサスペンスBLとかぶっ込んでみる!? ここらで腰を据えて、オリジナル長編ドラマを一本こさえようか!? まだまだ開拓の余地があり、無限の可能性を秘めた日本実写BL業界。これからどんな作品が出てくるのか、楽しみにしたいと思います!
 

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