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『君の心に刻んだ名前』映画&主題歌が全BLファンに刺さる【台湾映画】

2021/07/16 12:00

Netflixで見られる!!今台湾LGBTQ映画が熱い~!



2020年、台湾では同性愛がテーマに盛り込まれた2作の映画が大きな話題となったのをご存知ですか?

1作目は、『親愛なる君へ』(原題:親愛的房客)。
主人公の青年と、青年の亡き同性パートナーが遺した家族との絆を描いた作品で、台湾のアカデミー賞「金馬奨」にて主演男優賞、助演女優賞、オリジナル音楽賞の3冠に輝きました。今夏7月23日には日本で公開されることも決定しています!
※記事の最後に他注目作品とともに概要をまとめています。ぜひチェックしてみてください♪

そして2作目は、『君の心に刻んだ名前』(原題:刻在你心底的名字)。
先述の『親愛なる君へ』が家族を中心に据えた作品だとするなら、『君の心に刻んだ名前』は男性同士の恋愛がメインのBL的青春映画。こちらは昨年末からNetflixで配信されています。

『刻在你心底的名字』公式Facebookより

ストーリーそのものが素晴らしいことは言わずもがな! なのですが、「金馬奨」にて最優秀主題歌賞を受賞した楽曲「刻在我心底的名字」がまた、全BLファンの心に突き刺さる超名曲なのです……!

そこで今回は、物語の内容を辿りつつ、映画の名場面がふんだんに盛り込まれたMV、主題歌の日本語訳も併せて、じっくりと魅力をご紹介していきたいと思います!
※映画のネタバレが含まれます

◆目次◆
1. 『君の心に刻んだ名前』について知りたい!
2. ストーリーと萌えポイントが知りたい!
3.主題歌「刻在我心底的名字」について知りたい!
4.これから観たい!台湾LGBTQ映画3選

 

 

 

STORY
時代は1987年、戒厳令が解除された直後の台湾・台中。規律の厳しいミッション系の男子校に通う阿漢(アハン)と柏德(バーディ)は親友となり、次第に友情以上の感情を見出すようになる。そんな時、学校が男女共学になることが決定し、2人の所属するクラブ(吹奏楽)に新入生の美少女・班班(バンバン)が入部してきた。バーディとバンバンが親しくなるに連れ、アハンとバーディの微妙な関係は次第に崩れていく……。自由を許されたようでいて、同性愛への偏見と差別は無くならない。息苦しい社会で、ともに青春を歩む2人が選んだ未来とは――。


メガホンを取ったのは、リウ・クァンフイ監督。今作は彼が青春時代、同性の同級生に想いを寄せていた実際の経験が元になった作品なのです。

アハンを演じるエドワード・チェンは、2017年のBLドラマ『紅色氣球』での演技が話題に。その精悍な顔立ちは、スポーツマンを思わせる爽やかさ!

一方バーディ役のツェン・ジンホアは、無邪気さ、可愛らしさも備えたワンコ系イケメン! 2019年、台湾の大ヒットホラー・ゲームを映画化した『返校』に主演し華々しくデビュー、同作は7月30日に日本公開されることも決定しています♪
 


台湾現地での『君の心に刻んだ名前』旋風はすさまじく、2020年の台湾映画興行収入第2位、LGBTQ映画としては台湾映画史上第1位! 文字通り歴史を塗り替えた一作として、「金馬奨」では撮影賞と主題歌賞を受賞しました。

さらに主演の2人も、映画の役どころのみならず、「驊森CP」(曾敬驊と陳昊森の組み合わせ)が尊いと話題に。撮影前から共に過ごすなど、丁寧に積み上げてきた役作りが功を奏し、多くのファンの心を掴むことになったのです。


 

厳しい規律のなかで秘密を共有する2人

 


アハンとバーディが初めて出会ったのは、プールでの指導中。すぐに打ち解けた2人は、教官の目を盗んで夜の寮を抜け出したり、時には罰を受けたり、楽しいことも悪いこともともに経験します。規律の厳しいなかで青春を謳歌する2人を見ていると、秘密を共有しているようでドキドキしてしまいます……。
ある時、戒厳令の解除を宣言した蒋経国総統が亡くなり、追悼式に参加するため2人は台北へ。

台北訪問中、カラオケボックスで映画を鑑賞しながら眠ってしまったバーディに、アハンはこっそりキスをしようとします(!)。結局店員にたしなめられてその場を誤魔化すのですが、確実に大きくなっている恋心に、観ている側は居ても立ってもいられません……!!

街を歩いたあと、座り込み肩を寄せ合って眠る彼らの寝顔は、ポスタービジュアルにもなっています。アハンに甘えるように頬を寄せるバーディは夢で何を思っていたのか……この画だけで白飯が進むファンは私だけではないはず。

この台北旅を機に、2人の距離はさらに縮まることに!

たとえば、ある夜にバイクで映画を観に行った一幕。小さな映画館に忍び込み、人生を語り合います。「映画監督になりたい」と言うバーディに対し、「お前の映画に俺が曲をつけてやるよ」とアハン。彼らにとっても、『君の心に刻んだ名前』という作品にとっても、核となる大切なシーンです。

その後、アハンの自宅で眠った2人。アハンは気が付いていないようでしたが、バーディは明確な意思を以ってアハンに重なり鼻をすり寄せて……。物語が終始アハンの視点で進むだけに、この時のバーディが一体何を思っていたのかを考えるだけで、息が苦しくなります。

運命を変えた一人の女生徒

 

アハンとバーディは高校3年生。解厳を受けて学校が男女共学となり、2人の所属する吹奏部に女生徒が入部してきます。その中の一人、1年生の班班(バンバン)とバーディが親しくなったことから、アハンとバーディの関係は一気に変化していくことに。

アハンは、近づく2人の距離に苛立ちを隠せません。しかし「俺とばかりつるむのはもうやめろ。いい友達でいよう」「女の子を紹介してやるよ」と突き放すバーディ……。胸が痛くて直視できない……!!

その直後、バーディはアハンに借りたバイクで事故を起こし大けがを負ってしまいます。シャワーを浴びるのもままならない彼をアハンは無理矢理手伝うのですが……もう、このシーンの彼らが、ただひたすらにエロ切ない……!!(涙) 詳しくはぜひ映画本編でご堪能いただきたいのですが、この中でキスを仕掛けたのがバーディの方からだったという事実だけで私は……私は……(むせび泣き)。

「俺は好きな奴を言える。だがお前は?」

 
『刻在你心底的名字』公式Facebookより

バンバンとの関係が学校にばれ、処分を受けることになってしまったバーディ。学校に乗り込んできた彼の父が息子に暴力を振るい、アハンはバーディをかばってけがをします。

部活動の顧問であるオリバー神父に手当てを受けながら、アハンは友人への恋の苦悩を赤裸々に語ります。このオリバー神父は、リウ監督が通っていた高校に実在した神父がモデルとなっているそう。アハンもリウ監督も同性愛の悩みを打ち明け、しかしその想いを神父は認めませんでした。実は神父自身もゲイだったのですが、立場上同性愛を許すことができず、自身の気持ちも厳しく律していたのです。

騒動のあと、なぜかアハンの自宅にバーディがやってきます。女性を巡ってケンカをしたと勘違いする両親に、本当のことを告げようとしたアハンを止め、「全部お前のためだ」と語るバーディ。「俺は好きな奴を言える。だがお前は?」と迫るアハン……2人の本音と覚悟が滲み出る鬼気迫るシーンです。

同性愛が認められない時代。「自分の気持ちは罪なのか」と激しく抗うアハンも、突き放しているようで、実は誰よりも深くアハンのことを考え守り通そうとしていたバーディも……どちらも本物の愛で、初恋だったのです。

アハンは家を飛び出し、追いかけてきたバーディとともに、電車と船を乗り継いで勢いのまま遠い港町へ向かいました。砂にまみれたキス、海辺で過ごした2人だけの甘い時間……。「このまま世界が終わってほしいと思った」というアハンの独白が沁みます。

この日を境に、会うことをやめた彼ら。そして月日は流れ……大人になり、オリバー神父の故郷であるモントリオールで突然再会を果たします。あの時どんな想いを抱え、今どんな想いを抱いているのか――2人を繋いだオリバー神父の物語とともに、映画は幕を下ろすのでした。

 

 


物語の終盤、覚悟を決め、会うことをやめたアハンとバーディ。そんななか、アハンが自作して電話越しにバーディに聴かせたのが、映画主題歌でもある「刻在我心底的名字」でした。歌に乗せた想いを受話器越しに共有し涙する2人。もちろん観ている私も大号泣。

≪一生愛し抜く そう決めたんだ/世界の時間が止まってしまえば/君をいつまでも想えるだろう≫という言葉が、海辺でのアハンの独白と重なります。一途で切実な気持ちと同時に、世界の時間が止まってしまうほどのことが起きなければ愛しい人を想い続けることも出来ない、という苦悩が滲んで、オタクは天を仰ぐことしかできません……。

さらに映画のラスト、大人になって再会した彼らが過去の自分たちを振り返る場面では、アハンとバーディが歌う同曲を聴くことができます。≪再び出会ってもまた恋に落ちるよ≫の歌詞がこんなにも胸を貫くシチュエーションが他にあるでしょうか。

初恋の切なさと苦しさ、それだけではない幸せな時間もすべて内包された歌詞。映画を観たことがある方は主演の2人や登場人物を、そうでない方も自分の推しカプを思い浮かべてしっぽり浸れる名曲です。


「Amazon」より
 
作詞作曲を手掛けたのは、許媛婷、佳旺、陳文華というシンガポールとマレーシア出身の3名。エンディングの歌唱を担当したのは、台湾を代表するアーティストのひとり、盧廣仲(クラウド・ルー)です。

クラウドは、温かな歌声と素朴な人柄、独特な世界観の歌詞で老若男女問わず支持を得るシンガーソングライター。歌手以外にも映画の吹き替え、連続ドラマ主演など活躍は多岐にわたり、日本でもサマーソニック等のイベントから1000人規模の単独公演まで度々活動しています。

自身で作詞作曲、もしくは共作することが主であるクラウドが、今回のように自作曲以外を歌うのは稀なこと。それによって、映画の登場人物、鑑賞した人の気持ちをフラットな立場から代弁してくれているような仕上がりに。映画を観てからレコーディングに臨んだとのことで、感情を揺さぶる歌声に心から納得です。

2020年8月に公開された同曲のMVは、再生数4000万回に迫る勢い。ちなみに曲名が、映画の「你」から「我」になっているのは、聴き手がより自分の物語として歌詞を捉えられるようにとの映画製作者の思いが込められているからだそう。

皆さんも、映画の内容や自身の推しカプを想いながら、ぜひ何度でも聴いてみてくださいね!


 

Netflixで配信中の『君の心に刻んだ名前』ですが、この他にも現在または今後日本で観られる台湾LGBTQ映画があります! 今回はおすすめ3作品をご紹介♪

民族、世代、ジェンダー……あらゆる差異の狭間で

アリフ、ザ・プリン(セ)ス』(2017年『阿莉芙/ALIFU, THE PRINCE/SS』)

 

 

STORY
手術で完全な女性になることを目指し、台北でヘアスタイリストとして働いているパイワン族の青年・アリフ。しかし原住民の族長を父に持つ彼は、故郷で跡目を継がなければならないという悩みを抱えていた――。民族、世代、ジェンダーを取り巻く多様な人間模様を描いたヒューマンドラマ。


【公開情報】
現在都内での公開は終了。「台湾巨匠傑作選2021」の一環で、UPLINK京都にて8月3日に単発公開予定。

UPLINK京都 公式サイト

監督:ワン・ユーリン
脚本:ワン・ユーリン/シュー・ホアチエン、ホア・ボーロン、チェン・フイリン
出演:ウジョンオン・ジャイファリドゥ、チャオ・イーラン、ウー・ポンフォン、チェン・ジューション、チョン・レンシュオ
ほか


誰が父を、父は誰を、愛していた?

先に愛した人』(2018『誰先愛上他的』)

 

 

STORY
がんで死んだ父親には、男の愛人がいた――。
反抗期真っ只中の少年・宋呈希は、ヒステリー気味の母・劉三蓮に連れられ、父の保険金受取人である売れない舞台役者・高裕傑の家に押しかける。本命は自分だと言い張る自由気ままな裕傑と、愛人は自身の方だったのではという事実に激怒する気の強い母。2人の間に挟まれた呈希は戸惑い、辟易し、裕傑の家に居座るようになって……。色彩鮮やかな映像が胸に残るヒューマンコメディ。第92回アカデミー賞国際長編映画賞台湾代表作品。


【公開情報】
Netflixにて公開中

監督:シュー・ユーティン、シュー・チーイエン
出演:ロイ・チウ、シェ・インシュエン、スパーク・チェン、ジョセフ・ホアン
ほか


守ることは、愛すること

親愛なる君へ(2020年『親愛的房客』)

 

 

STORY
今は亡き同性パートナー・立維の家で、大家の老婦・秀玉とその孫・悠宇の面倒を見ている主人公の青年・健一。ある日秀玉が急死したことで、健一はあらぬ疑いをかけられることに。しかし、どんなに周囲から不審な目を向けられても、彼はただ罪を受け入れようとする。それはすべて、愛する“家族”を守りたいという想いからの行動だった。

 

【公開情報】

7月23日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次ロードショー。

公式サイト

 

監督/脚本:チェン・ヨウジエ

監修:ヤン・ヤーチェ

出演:モー・ズーイー、ヤオ・チェンヤオ、チェン・シューファン、バイ・ルンイン

 

まとめ

 

2019年にアジア初の同性婚法が成立、同法以前からも各地で同性パートナーシップ制度が導入されているなど、台湾はLGBTQについて関心が高いというイメージを持っている方も多いのでは。

 

映画やドラマでは、同性間の恋愛ストーリーのみならず、ジェンダーそのものや、家族の絆が前面に描かれる作品も増えてきました。男性同士の恋愛、青春がテーマの『君の心に刻んだ名前』がわざわざ「BL映画」と称されるのも、台湾内におけるLGBTQ作品の幅が広がってきた故なのかも知れません。

 

その一方で、LGBTQ作品が多く作られる理由にはLGBTQを取り巻く現状をより良くしたい」という希望が込められている側面も。戒厳令解除から30年以上……叶うことなく、口に出すことすら許されず散っていった初恋たちに、映画『君の心に刻んだ名前』、そして主題歌「刻在我心底的名字」はずっと寄り添い続けるのだと思います。

 

刻在我心底的名字 忘記了時間這回事

(僕の心に刻んだ名前 知らぬ間に時が過ぎていく)

於是謊言說了一次就一輩子

(一度のウソが僕の人生を縛る)

曾頑固跟世界對峙 覺得連呼吸都是奢侈

(かたくなに世界に抗った過去 息すらもできなかったあの頃)

如果有下次我會再愛一次
(再び出会ってもまた恋に落ちるよ)

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