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タイBL『Love in The Air』あらすじからキャストまで徹底解説!濃厚すぎる王道BLに悶える
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2021/04/26 19:00
タイの『2gether』や中国の『陳情令』など、今急速に広がっているアジアBL・ブロマンスの波。日本で誕生したBLは今や世界各国に広がり、ワールドワイドな文化として根付いています。
でも、実際日本との違いや、どんな文化が広がっているのかは今ひとつ見えにくいもの。特にアジア以外の国に関してはあまり作品が日本に上陸していないこともあり、知る機会が少ないですよね。
そこで、今回はイギリス旅行を機に海外BL文化に興味を持った筆者が、「海外のBL・ブロマンス文化」を大調査! 欧米の「M/M」はもちろん、ニュージーランド、そしてドバイまで……! 世界の果てまで大解説しちゃいますよ〜!
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日本では広く知られていながらも、あまり「文化」として論じられてこなかったBLという存在。百合やセクシュアルマイノリティなど多種多様なテーマで掘り下げられている『BLの教科書』コラムの中で、「海外におけるBL文化の広がりと海外の研究」では、グローバルな視点でBLが考察されています。
特にBLの歴史について、国によってはここ十年ほどで急激に成長した新しい文化であることに驚き、これまで、そしてこれから私たちと一緒に育っていく文化なんだなあとしみじみ感じました。
そこで思い出したのが、以前、イギリスを訪れたときの出来事。せっかく憧れの『ハリーポッター』や『モーリス』、『パブリックスクール』といった作品の舞台に来たんだから…! と現地の書店でイギリスが舞台の小説を買い漁っていました(自分の英語力では読めるかどうかすら怪しかったにもかかわらず……)。
さらに、ぜひ現地生産されたBLが欲しい! 海外と言えばM/M小説、あわよくば日本じゃお高いジョシュ・ラニヨン先生の原作本が欲しい……! と思い、何件も書店を探しました。しかし、色々と調べてはみたものの、お目当ての本は一向に見つからず……。
そして、とうとう旅行最終日。ここならヲタク本があるらしいとの情報を得てイギリスのアニメイト的なショップである"fobiddon planet"を訪れたところ、ようやくBL作品を発見!
(一般作品と一緒に『NightS』『テンカウント』『僕らの食卓』などの作品が並んでいます)
しかし、やはり日本の作品が人気なのか日本のBLコミックスの英語訳版が多く、外国のBL本はほとんど見つからず…! 唯一縦置きの棚に現地生産ぽいサッカー少年たちの青春BLコミックを見つけました!
なんと、お店の週間ランキング11~13位に食い込んでいました。一般作品に混ざってこのランキング……現地生産のBL作品もかなり人気があるようです。
しかし、その後もぎりぎりまで回ってはみたものの、結局のところお目当てのBL小説を見つけることはできず……自分のサーチ力の足りなさを痛感しました。
そんな少ししょっぱい思い出ですが、ここで気になるのは「一般書店でBLを売っているのは日本だけなのか」「海外のBLファンはどこでBLを摂取しているのか」という点。今後いつ海外に行ってもBLリサーチができるように、海外のBLファンは一体どこでBLに触れるのか知っておきたい! と考えたのです。
前置きが長くなりましたが、今回は筆者の調べられる範囲で、各国の現在のBLにまつわる状況と海外のBL文化の歩みを簡単にまとめてみたいと思います! 最新情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントにお寄せください!
欧米といったら、M/M小説! 日本ではモノクローム・ロマンス文庫として新書館から発売されています。
ニッチな市場でしたが、2008年ごろから大きく成長し、今では日本でもペーパーバックをよく見かけるペンギン・グループなどの海外大手出版社も参入するような規模になっています。
「女性が(主に)女性のために書く」エロティックロマンスであり、海外育ちのオリジナルジャンルであるM/M小説の作者には、現実のLGBT問題に寄り添ったスタンスをとる書き手が多いのも特徴です。エンターテイメントである一方で、ゲイ差別やHIV/エイズの認識などの社会問題について真っ向から取り組んだ作品が多い傾向を感じます。
筆者がイギリスで探し回っていたジョシュ・ラニヨン先生もこのM/M小説の書き手であり、本格ミステリ調の作風は、日本のBL小説と似ている部分もありつつ、そうでない部分もあり……。日本の作品とはまた違った空気感を感じられるところがまた素敵なんです!
アメリカにはもともとテレビやコミック、映画の男性キャラクター同士をカップルにして妄想する「スラッシュ」と呼ばれる二次創作の文化があるため、BL(海外ではyaoiと呼ばれるが、日本の「やおい」と違いオリジナル作品を指すことが多い)が根付くのもそう遅くはなかったとか。
2012年にはBL専門出版社「やおいレボリューション」が創立され、"大人っぽく、男らしく"といった欧米独自の作風を追い求めた作品が多く出版されています。また、アメリカでは日本と比べBL本の男性読者が非常に多いそうです! 日本と同様に一般書店に専門コーナーもあるそうで、BLが身近な存在であることが分かります。
注目ポイントとしては、高級ホテルを貸し切って現地で人気の日本の作家や声優をゲストにイベントが開催される点! そんなの素敵すぎる! この文化は日本にもぜひ輸入したいです! リッチにセレブにBLを楽しむ……そんな日が年に一度あれば素敵ですよね~!
ちなみに、二次創作は日本の作品も浸透していますが、アメリカはやはりアメコミが主流なようで、深い深ーいアメコミ沼が広がっているんだとか。英語圏の二次創作サイトなどを覗くとアメコミ作品の人気っぷり、そして堂々たる王道ジャンルの廃れなさをじっくりと感じられますよ~。
イギリスもアメリカと同様に、映画の男性キャラクター同士をカップルにして妄想する「スラッシュ」と呼ばれる二次創作の文化があるため、BL文化への入りは早かったようです。先ほどからご紹介している「アドリアン・イングリッシュ」シリーズの著者・ジョシュ・ラニヨン先生もイギリス出身です。
しかし、一般書店にM/M小説やBLコミックが置いてあることは少なく、BLがそこまで浸透しているワケではないようです。M/M小説などが存在しているので当たり前のように根付いているという印象でしたが、実態はそうでもなさそう……。
商業としてのオリジナルBL作品もあまり浸透していない反面、M/M小説を破格の送料で日本までお届けしてくれるサイトもあったりするので、ファンの間でのオンライン上のやりとりが賑わっているのかもしれません。現在も二次創作という側面を中心にBL文化が浸透しているようですね。
ドイツはヨーロッパのなかで一番BL好きが多い国らしいです!
しかし、マンガは輸入という文化が強く、自国のマンガ家は1割以下。90年代半ばまではアメコミと、バンド・デシネというフランス語圏のマンガが主流で、90年代後半以降に日本のマンガもそこに加わっていったとのこと。
(ドイツの作家によるBLコミックス『スター・コレクター(Sternensammler)』より)
ドイツはマンガ読者の7、8割が女性ということもあり、国内で売られているマンガのうち3割程度がBLなんだとか。日本は1割程度なので、圧倒的BL率…! 普段から漫画を読んでいる人の約3人に1人がBL好きと考えると……最高の環境ですね。
フランスは比較的BLを嗜んでいる方が多い印象ですが、実はBLが入ってきたのは欧州では一番遅かったとか。しかし、その後急速に普及したいったそうです。何かしら飢えていたものがBLによって満たされたのでしょうか。
この普及スピードについては、主な理由としてバンド・デシネなどでもともと漫画をよむ風潮が根付いていたことと、フランスには恋愛に自由な雰囲気があるからではないかと考えられているそう。
書店では少女マンガと同じ棚に分類されており、「Yaoi/Shojo」とひとくくりにされていることが多いようです。男同士、女同士、男女の恋愛とそれぞれを極端に区別しないフランスの感覚は素敵ですね。
なんとびっくり! ニュージーランドでは公立図書館にBLコミックが置いてあることもあるそうです(笑)。
残念ながら書店の情報は入手できませんでしたが、これは良い情報を得ました。しかし、これはどういう意図で図書館に置かれているのでしょうか……いちBL好きとして何だか少し誇らしいような、そんな気持ちになりました(笑)。
韓国は表現規制は厳しいものの、ウェブトゥーンなどの自国作品(アニメ、ドラマ、映画など)が多いです! 日本でも韓国の作品が翻訳され電子書籍として連載されていたり、商業BLとして出版されてたりするのを見かけます。日本より修正は多めですが、日本のように普通に売っているとのことで、韓国に住んでも生きていける……と一安心しました。
筆者の印象としては、韓国BLはプラトニックな雰囲気でじわじわと心に沁みるストーリーのものが多いように感じます。描写が丁寧だからこそ、結ばれた時の感動もひとしお! 大学生モノなどが多く、筆者も常々お世話になっています。
こうやって世界各地のBL事情を見ていると、当たり前かもしれませんが、BL漫画や小説、二次創作の根付き方には、その国々の宗教観や文化、価値観などが大きく関わっているということをひしひしと感じました。
明治大学国際日本学部教授の藤本由香里先生によると、日本では広くBLという文化が根付き、一般社会に受け入れられつつある印象ですが、日本でここまで多岐に渡るジャンルがあるのも宗教理念が薄いためと考えられるのではないか、とのことです。
また、どの国にも広く根付いている二次創作文化については、プラットフォームが国ごとではなく言語ごとに分かれているという点も驚きでした。海外で有名なプラットフォームとしては、英語圏の「tumbler」「deviantART」「achive of our own」などが挙げられます。ジャンルごとにみっちり分かれており、その賑わいっぷりは圧巻ですので、ぜひ一度覗いてみてはいかがでしょうか。
それぞれの国ごとの特色を反映し、互いに刺激し合って、BLはこれからもどんどん進化を遂げそうですね!