歴史、DK、コメディも! 韓国ゲイ映画の流れが詰まった名作たち
みなさんは韓国のゲイ映画をご覧になったことがありますか? 同性愛に対する規制の厳しい同国ではありますが、タブーと戦う意味もあってか、男性同士の恋愛を扱った映画はいくつも制作されています。
ここでは、年代順に注目作品・注目監督作品を抜粋してご紹介! 歴史物、ドキュメンタリー、短編から長編までと幅広いラインナップをピックアップしました。
ストーリーも同性愛のタブーに切り込むようなものからポジティブに切り取った作品まで様々なので、掘り進めていけばきっとお好みの映画にたどり着けるはずですよ!
現在ではなかなか見ることのできなくなってしまった作品も多いですが、動画配信されている作品については配信情報も掲載しているので、ぜひおうちでゆっくり楽しんでくださいね!
『王の男』(2005年)
あらすじ16世紀初頭、地方の旅芸人一座の花形チャンセンと女形のコンギルは、一座を抜け漢陽へ向かう。彼らはそこで宮廷をからかった芝居を上演し、民衆の心をつかむ。だがある日、王の重臣に宮廷で芸を披露し、王が笑わなければ死刑だと言い渡される。
とにかく女形コンギル役のイ・ジュンギが美しい! 韓国では、この映画のヒットをきっかけに同性愛が公然化しはじめた、との見方もあるほど評価の高い作品です。
動画配信TSUTAYA TV
『後悔なんてしない』(2006年)
あらすじ孤児院を出て工場でアルバイトをするスミンに、初めて出会ったときから惹かれていた工場の経営者一族の御曹司ジェミン。しかし、工場をクビになりゲイ・バーで働くことになった経緯から、スミンはジェミンの気持ちを受け入れられなかった。そんなスミンも少しずつ、ジェミンのまっすぐな愛情に心を開いていく。
韓国で初めて同性愛者であることをカミングアウトした映画監督イ=ソン・ヒイルによって、真正面から同性愛が描かれた作品。インディーズ映画としては異例の4万人を動員、『悔いなき恋 -NO REGRET-』との邦題で日本でも2008年に公開されました。
『Gショートムービーセレクション』(2009年)
(1)『ただの友達?』
あらすじ甘い夜を過ごそうと、ソクは兵役中のボーイフレンド、ミンスを訪ねるが、ミンスの母と鉢合わせする。二人の関係を尋ねられても友達だと答えるしかなかった。ふとしたことから、二人はミンスの母と一晩過ごすことになるが……。
(2)『少年、少年に会う』(2008年)
あらすじ暖かい春の日、小柄な少年ミンスは、背が高くて、肩幅の広いソクにバスの中で出会った。ミンスは、その強そうな少年をじっと見つめていたが、ソクの鋭い目は、野球帽の下に隠れていた。ミンスの心臓は、どきどきし始めた……。
(3)『愛は100℃』(2010年)
あらすじ耳の不自由な少年ミンスはある日銭湯へ行き、そこで働く男と衝動的にセックスをする。それ以来、ミンスは銭湯に足繁く通うようになり……。
監督は、過去に自らゲイとカミングアウトし、これまでに数々の作品プロデュースも手掛けてきたキム=ジョ・グァンス氏。短編3本をまとめた作品集として日本では2013年に公開されました。
キム=ジョ・グァンス氏は、前述の映画『後悔なんてしない』をプロデュースしたことでも知られる人物で、2013年には19歳年下の同性恋人との結婚を発表。韓国国内でのセクシュアル・マイノリティに関する動きを牽引する存在でもあります。
『2度の結婚式と1度の葬式』(2011年)
あらすじ秘密にしなくてはいけない新婚生活。カミングアウトしていないゲイのミンスとレズビアンのヒョジンは結婚する。結婚をせかす両親の干渉から逃れるため、そして、周囲の目をごまかすための偽装結婚だ。完璧な新婚夫婦を装いながら、本当の恋人が住む隣の部屋に出入りしている。しかし、ミンスの両親が突然訪ねてくるため、2人の計画は思いどおりにいかない。果たして、うまくごまかしきれるのか?
こちらもキム=ジョ・グァンス監督による作品で、初の長編。同性愛というテーマを明るくポジティブに描き出す彼らしい作風でスマッシュヒットを記録。世界各国のクィア映画祭(クィア=セクシュアル・マイノリティを指す言葉)で上映されています。
『REC(アール・イー・シー)』(2011年)
あらすじヨンジュンとジュンソクは、つきあって5年の記念日に、これまで決してやったことのない思い出を作ることを決めた。モーテルに行き、貴重な思い出をビデオカメラに記録する。しかし、夜が深まると、2人の愛は何か別のものに変わっていく……。
監督はソ・ジュンムン。彼は2010年に制作された、4人の同性愛者を追った韓国のドキュメンタリー映画『チョンノの奇跡』に出演するなど、ゲイをオープンにしています。なお2004年に公開された韓国のホラー映画『REC(レック)』とは無関係ですので、検索の際などホラーが苦手な皆さまはご注意くださいね。
『白夜』『あの夏、突然に』『南へ』【イ=ソン・ヒイル監督三部作】(2012)
(1)『白夜』
あらすじドイツで客室乗務員をするウォンギュは、乗り継ぎのため2年ぶりにソウルで宿泊することになり、ネットを通して知り合ったバイク便の男・テジュンを呼び出す。しかしテジュンは一時的な快楽関係には応じず、やがて2人は夜の街を彷徨うことになった。何かを探しているウォンギュと、付き添うテジュン。飛行機が飛び立つまでの限られた夜、2人の心に変化が訪れる。
(2)『あの夏、突然に』
あらすじ男子高校生のサンウは、仕事熱心で真面目な担任教師のキュンフンに想いを寄せていた。ストーカーのようにキュンフンにつきまとっていたサンウは、ある日ゲイバーで盗撮した写真をたてにキュンフンを脅し、1日だけ自分と過ごすよう迫る。表向きでは拒むキュンフンだったが、押し込めていた欲望は疼きだし……。
(3)『南へ』
あらすじ兵役中のギテは、休暇をもらい指導官だったジュンヨンを訪ねたが、冷たい態度で会うことを拒まれてしまう。ギテは睡眠薬の入ったコーヒーをジュンヨンに飲ませると、基地とは逆の南へと車を走らせていき、ジュンヨンを犯す。実は2人には、兵役中に共有したある秘密があった。
メガホンをとったのは、名作『後悔なんてしない』を手掛けたイ=ソン・ヒイル。日本では三部作として「第4回アジアンクィア映画」にて上映され、話題を呼びました。
『白夜』は2011年に実際に韓国で発生した、ゲイに対する暴行事件がもとになっており、韓国のLGBTを巡る背景とともに、主人公の心身に刻まれた傷跡を描き出しています。
なお日本版ではありませんが、3作品すべて収録したDVDも発売されていますよ!
『夜間飛行』(2014)
あらすじ中学では親友同士だったヨンジュ、ギテク、ギウンの3人。しかし高校に進学すると、ギウンはギテクをいじめるグループのボスになり、3人の関係性が歪んでいく。優等生のヨンジュは、問題児となったギウンに戸惑いながらも友情を取り戻そうとするが…。
こちらもイ=ソン・ヒイル監督によるもので、中編『あの夏、突然に』の流れを汲む作品。根強いセクシャルマイノリティ差別に加え、社会格差、学歴重視による苦悩など、韓国の過酷な環境で生きる人々の姿が描かれています。
主演のクァク・シヤン、イ・ジェジュンは、モデル出身で今作が初演技という新人俳優。イケメン2人が演じる高校生の恋に注目です! 韓国のゲイ映画ファンからも高い人気を得ています。
『メソッド』(2017)
あらすじ
ベテラン俳優のジェハと男性アイドルのヨンウは、『アンチェイン』という二人芝居の舞台で共演することが決まる。自身をメソッド俳優だと自負するジェハはメソッド演技法を学んでおり、役のアイデンティティを日常生活に引き継ぎ、プライベートでも役として振る舞う。このメソッドを知ったヨンウは密かに同じ方法を実践し、ジェハとヨンウは実際に恋に落ちるがーー
こちらは韓国の女性映画監督・パン・ウンジン監督による作品。舞台で同性愛者の役で共演することになった若きアイドルとベテラン俳優が次第に心を寄せ合っていく様を描いています。
アイドルであるヨンウを演じるのは、モデル出身の若手俳優であるオ・スンフン。ポスターからも分かるように、ジェハとヨンウの絶妙な年の差もたまらんポイントですね…!
2人の恋心は演技なのか本心なのか……思わず見入ってしまうストーリー展開にも注目です。
こちらの作品はいくつかの動画配信サービスで見ることができるので、ぜひチェックしてみてください!
動画配信
楽天TV/FOD/ビデオマーケット/GYAO!
『Long Time No See』(2017)
あらすじネット小説家と殺し屋という2つの顔を持つジスは、ある日彼の小説のファンであるという青年・ギテと出会う。運命的な出会いにすぐに惹かれ合う二人だったが、二人は互いに相手には絶対に明かすことのできない秘密を抱えていて……。
「韓国初のBL映画」ともいえるストーリー展開が魅力の本作。殺し屋とて育てられた男が年下の青年と出会って…というあらすじの時点で腐女子的には満点ですよね…!
日本のBLレーベルでいうと、今よりも少し懐かしい時代の麗人やビーボーイのようなテイストでしょうか。作中では二人のポジションは名言されてませんが、絡みシーンもたっぷりあるので、BL作品を読むような気持ちで見ることができる作品です!
動画配信楽天TV/FOD/ビデオマーケット/GYAO!
『詩人の恋』(2017)
あらすじソウルから遠く離れた済州島で、夢見がちな詩人が真実の愛に目覚める――。
自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、ここ数年スランプだ。稼げない彼を支える妻ガンスン(チョン・ヘジン)が妊活を始めたことから、テッキの人生に波が立ちはじめる。乏精子症と診断され、詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)だった。彼のつぶやきが詩の種となり、新しい詩の世界への扉を開いてくれたのだ。もっと彼を知りたい―。30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせていく……。
韓国女性映画祭脚本賞、東京国際映画祭出展など、数々の受賞を果たしたこちらの作品。キム・ヤンヒ監督の長編デビュー作です。「詩人なのに太ってる!」と子供たちに揶揄されてしまう、心優しき詩人・テッキ役は、『息もできない』で長編作品監督・主演なども務めたマルチプレイヤーのヤン・イクチュン。テッキが心を奪われる美青年・セユン役に、『感染家族』のイケメンゾンビ役で話題になったチョン・ガラム。
中年の詩人と美青年の眩しい心の交流を、じっくり見守りたい気持ちにさせてくれます。セユンとの交流を通して詩作を深めていくテッキの純粋な恋が、風光明媚な港町の景色と溶け合っていきます。鮮やかな映像美と胸に突き刺さる秀逸なシナリオは、一見の価値ありの名作です。
いかがでしたか?
他にも、LGBTQをテーマにしたコンテンツに特化した台湾の動画・映画サイト
「GagaOOLala」では、日本字幕未対応ですが、キム・フン監督の『
One Summer Night』・『
Tropical Night』等、韓国のクィア映画作品などもありますので興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか!
また、韓国では
「99film」という、同性愛を扱う映画を主に制作する会社も、どんどん作品を発表しています。同社の
YouTubeページや
インスタグラムなどの公式SNSでは、ゲイ映像作品を一部鑑賞することができますので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね!